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第4章「腕のいいドクターと巡り会うこと」がカギ
脂肪吸引を成功に導く病院・医師の選び方

脂肪吸引は「自由診療」である

ここまで、脂肪吸引の施術に関してご説明してきましたが、第4章では脂肪吸引にかかる費用についてもお話ししておきましょう。

美容医療の世界は、ほぼすべてが「自由診療」で、費用は全額患者さんの負担となります。

ですから、脂肪吸引を考えるなら、 「自由診療」の性質を知っておくことが重要です。

自由診療の場合、全額が自己負担で高額にはなりますが、症状や状態に適したもののなかから、細かな希望を出し、理想のデザインを追求することができます。それが自由診療の強みです。

数ある選択肢のなかから「自分の好きな方式」や「信頼する医師」を選べるということです。

とはいえ、そのような状況を逆手にとるかのようなクリニックが、残念ながら一部存在します。

例えば、「公開されている価格と、最終的に払う価格が違う」クリニックは、珍しくありません。オプションであとから追加料金が加算されていく、という仕組みです。

また、安いキャンペーン価格を謳っておき、カウンセリングで高いコースを提示するなど「金額がどんどんアップする」というクリニックもよく見かけます。

このような「看板に偽りあり」の料金体系を見抜くのは困難です。

手術を希望するクリニックの候補が見つかったら、 「価格表にある費用だけですべてですか?」と確認しましょう。

トラブルを避けるのなら、最初に明朗な「ワンプライス会計」のクリニックを選ぶのがお勧めです。

ワンプライス会計のクリニックなら、手術費用以外にあとからさまざまな名目の費用が加算されていくことはありません。手術費用は、麻酔代や薬代、術後のアフタートリートメントまで、すべて含めた料金設定です。

美容医療の世界は、自由診療であるがゆえにトラブルが多い、といえます。

患者さんが痛い目に遭っても「自分で選んだのでしょう?」とみなされ、被害を相談する先もありません。だからこそ、最初からよいクリニックを選びたいものです。

「クリニック選び→医師選び」の二段構えで検討する

脂肪吸引は、担当する医師の技量に大きく左右されます。

自由診療だからこそ、その技術やサービスに〝格差〟があるのです。

例えどのような仕上がりになっても、 「患者さんがそこを選んだから」という自己責任になるのです。これは通常の「買い物」と比べても、同じことです。

例えば車を買うとしましょう。

「安いから」という理由で細かい点にこだわらず、価格だけを見て適当に車を選んで入手した場合、その車がすぐに壊れたとしても、 「車屋さんでその車を選んだのは、その人の責任だから」という話になります。

「どこで受けても同じ」という保険診療なら、ある程度医療の質は同じ水準に保たれ、安全性は担保されています。

でも、そこまで患者さんが「守られていない」のが、自由診療なのです。

さらにいうと、医療の場合、 「ものを買う」という消費行動とは大きく異なる点があります。それは、患者さんの健康が損なわれてしまったり、命に関わる事態が引き起こされかねないという点です。

「安いものを買って散財したね」という話では決して済まされません。

ですから、 「どのクリニックか」 「どの医師か」という見極めを、しっかりやっておくことが重要です。

そのために、 「どのクリニック(医療機関)か」を考えてから「どの医師か」を検討する、 「クリニック選び→医師選び」という二段構えで検討してみてください。

インターネットで調べれば、そのクリニックが採用している脂肪吸引の術式が分かります。その時点で、クリニックの候補が絞られるでしょう。

それから医師を選びます。

医師を選ぶ際に、そのクリニックのサイトに、 「医師の紹介」や「医師のプロフィール」といったページがない場合、残念ながら問題外と考えてください。

脂肪吸引の世界では、医師の経歴や顔写真に加え、症例写真まで公開されているのが〝常識〟です。

医師選びには「ブログ」や「SNS」をチェックする

脂肪吸引に興味がある方に、正しい情報を提供することも医師の責務です。

特に、現在はインターネットが発達していますから、ネット上で発信をすることで、患者さんは治療の完成図をイメージしやすくなるはずです。

ですから、症例写真を紹介していないクリニックもまた、今の時代は問題外です。症例写真がないということは、単純に症例が少ないか、公開できるような写真がないだけだと考えられます。

今はスマートフォンでも簡単に写真を載せられる時代ですから、忙しいから写真をアップできないというのは噓です。

「手術件数の数(実績) 」=「その医師の実力」という側面があります。

患者さんには、その点をぜひ見抜いてほしいのです。

患者としてのネットリテラシー(ネット情報を読み解く力)をアップしてもらえれば、よい医師にたどり着きやすくなります。

「たまたまうまくいった症例」だけを、わずか数件、何年間も掲載し続けているようなサイトや、明らかに「更新されていない」サイトもよく見かけます。

「発信への意欲」や「頻度」から、医師の熱量や力量は、自ずと伝わってくるでしょう。

同じ医師免許という国家資格を持っていても、その腕や熱意には大きな差があります。そこを見抜くことが重要です。

「センス」 「美的感覚」の合う医師を選ぶ

実際、私のもとには、脂肪吸引を希望しながらも、どこのクリニックで受けるのがよいか迷われている方からのメールが数多く届きます。

例えば、次のようなご相談です。

「脂肪溶解注射を3回しましたが、効果が感じられないので脂肪吸引を考えています。ただ、どうやってクリニックを選んでいいのかが分かりません。何か基準のようなものがあれば教えてください」

クリニックを選ぶ基準については、何とも言い難いものです。ただ、クリニックによってどの施術を得意としているかは違います。

ですので、脂肪吸引手術を受けるのなら、症例写真やブログで脂肪吸引の事例を紹介しているクリニックを選ぶことがポイントです。

あとは、実際にカウンセリングを受け、医師との相性を見て、信用できるか判断するのがよいでしょう。

膨大な候補のなかから、 「実際に通えるところ」などの条件によってふるいにかけるうち、 「価格」の違いという問題に突き当たり、悩む方もいます。

その代表的なお悩みをご紹介しましょう。

「脂肪吸引をすると決意したのですが、クリニックによって言うことが違ったり、値段も違うので迷っています。安いクリニックに惹かれる気持ちもありますが、やっぱり失敗したくないという気持ちもあって。どうやってクリニックを選んだらいいでしょうか?」

確かに、全国にはさまざまなクリニックがあり、値段もそれぞれですので、悩むのは当然のことでしょう。最もよいのは、二~三つのクリニックに候補を絞り、候補のクリニックすべてでカウンセリングを受けることです。

医師と患者さんもあくまで人間同士。ですから、 「合う・合わない」という問題はあります。

カウンセリングで実際に医師の雰囲気を見た段階で、ある程度の判断はつくはずです。

また、脂肪吸引を受けるにあたり、術後のフォロー体制もポイントになります。

術後もしっかりと相談を受け付けてくれるクリニックのほうが、術後も安心して過ごせます。

カウンセリングの段階で、そこまで「親切に説明しようとしないクリニック」は、「論外」と思ってよいでしょう。

美容医療につきものの「医師のセンスにまつわるお悩み」も数多くいただきます。

こんな声をいただいたこともありました。

「コンデンスリッチ豊胸に興味があり、検討していますが、結局のところ、医師のセンスが大事な気がします。どういったところで判断すればいいのでしょうか?」

この患者さんのおっしゃる通り、 「医師の美的センス」も仕上がりを左右します。

とはいえ「センス」とは個人差が大きいものですし、感性が似ているかどうかという点もあるので、断言しにくいものです。

そこでお勧めしたいのは、相手を「見た目」や「直感」で「快」と感じるかどうかで判断することです。

例えばクリニックの内装、その医師の外見(ファッション、姿勢、表情) 、話し方などでだいたいのところは分かるはずです。何軒かカウンセリングを体験して、 「自分と感覚が合う」と思える医師に任せるのが理想的です。

美容医療の世界で医師を選ぶのは、同じ「美」を扱う「美容院」 「美容師選び」と似た部分があります。

「キレイにしてもらおう」という期待で胸をいっぱいにして訪れているのに、お店が不潔だったり、内装が古びていたり、美容師が「イケていない」感じだったり、ヘアスタイルが「ヘン」だったら、そこでのスタイリングはお願いしたくはないはずです。

脂肪吸引も同じです。

「脂肪吸引=医療。だから、ダサくてもいい」ということにはなりません。

手術を担当する医師自身が「美」に無頓着だったら、患者さんは違和感を持つべきです。

自分の体を委ねるのですから、後悔しないためにも、相手の美的感覚をシビアにチェックしてください。

「患者の心に寄り添っている」医師を選ぶ

脂肪吸引では、 「現状の患者さんのコンディションと折り合いをつけながら、デザイン性にこだわりつつ、患者さんの理想像に近づけていくこと」が、医師の最重要課題になります。

ですから、医師には患者さんの声に耳を傾け、心に寄り添うことが求められます。

ところが私のもとには、次のようなメールがよく寄せられます。

「脂肪注入での豊胸を真剣に考えています。他院のカウンセリングに行ったところ、終始早口で説明され、私の体を見ることもなく5分くらいでカウンセリングが終了してしまいました。いくつか聞きたい質問があったのですが、急かされているようで逆に不安になってしまいました」

カウンセリングとは、実際的な「打ち合わせの場」です。

同時に、医師と患者さんが信頼関係を築く場でもあります。

その大事な時間を「短く済ませよう」とする姿勢には、私は疑念を覚えます。

カウンセリングの場で「ピンとこない」 、もしくは「話を真摯に受け止めてもらっていない」と感じたら、そのクリニックでの脂肪吸引は考え直すべきでしょう。

それほど、カウンセリングは重要です。

カウンセリングが「手術がうまくいくかどうかを左右する」といっても、過言ではありません。

私の経験上、 「カウンセリングを行った医師と、実際に手術を担当する医師が違うと、もともと希望していたイメージと違う仕上がりになり満足できない」というケースが多いようです。

そのような事態を防ぐためには、 「カウンセリングを担当した医師」が、手術まで担当するような仕組みにすることが必要です。

また、「理想的なカウンセリング」かどうかを見極めたいときは、脂肪吸引の「細かいデザイン」まで具体的に、自由に話せる雰囲気かを基準にしてください。

例えば「二の腕の、この部分が特にイヤなんです」という率直な思いや、具体的な要望を恥ずかしがらずに話せるかどうか。

わざわざクリニックに出向き本音で話すわけですから、そこがよいクリニックなら、医師たちも真剣に向き合ってくれるはずです。もし、リクエストしたことが現実的に難しければ、きちんと説明があるでしょう。

それが医師として〝最も誠実な態度〟だと、私は信じています。

カウンセリングで診察をきちんとしているかどうか

カウンセリングとは、言葉のやりとりにとどまるものではありません。

実際に体の診察もします。

患者さんの年齢や身長、体重、体脂肪率など、数値で分かることは、ほんの一部。実際に、脂肪の付き具合や肌の調子を見て、分かることも多くあるからです。

「体の現状」も事前に把握をしておかないと、本当によい脂肪吸引はできません。

しかしながら、他院で手術を受けた患者さんから、次のような声がありました。

他院で太ももの脂肪吸引の手術を受けたが、3カ月経っても太もも全周の太さがほとんど変わっていない。

カウンセリング時には太ももを診ることも触ることもいっさいなく、ただ症例写真を見せて「このように太ももの間に隙間ができます」とだけ言われて、あっという間に終わったので疑問に思った。しかし、担当の先生が総医院長であったため、 「カウンセリングはこういうものなのかもしれない」と思った。 「総医院長が手術をしてくれるのであれば仕上がりも間違いない」と信じ切ってしまい、その日のうちに前金を支払い、翌々日には手術を受けた。

ところが担当の医師は、術前でさえも太ももの診察をするどころか、触ることすらなく、10秒程度マーキングをするのみだった(内ももの凹凸に線を入れ「脚を真っ直ぐしますね」と言われただけ) 。

今となっては取り返しがつかないが、 「脂肪吸引のカウンセリングで実際に診察をしない」ということがあるのか教えて欲しい。

確かに、脂肪吸引は同じ太ももの太さでも筋肉量の違いから、期待できる効果が個人によって違ってきます。だからといって、診察をしなくていいわけではありません。

必ずカウンセリングの段階で実際に太ももを見せてもらい、期待できる効果はどれくらいか具体的に説明するのが基本です。

説明をすることで患者さん本人も納得され、特に術後は不安を抱くことなく過ごすことができるからです。

ただ残念ながら、カウンセリング時に手術をする箇所を診察しないというクリニックは、今でも多く存在します。

そういったことも含め、事前にご自身の考え方にあったクリニックを選ぶことが非常に大事です。

後悔しないために、 「実際に手術を行う医師が、カウンセリングにどれだけの情熱を傾けているか」を、医師選びの基準としてください。

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長野 寛史

長野 寛史

1982年、岩手県生まれ。2006年に東京慈恵会医科大学医学部を卒業し、亀田総合病院に入職。その後東京慈恵会医科大学勤務を経て、2012年にTHE CLINIC(ザ クリニック)入職。福岡院院長、東京院院長を経て、2016年Mods Clinic(モッズクリニック)を開院する。ボディデザインにおける芸術と形成外科の融合であるVASER®4D Sculpt™、コンデンスリッチファット療法の認定資格を取得し、脂肪吸引・脂肪注入分野の圧倒的な症例数を誇る。「綺麗になるための手術以外はしない」を信条とし、日々患者と向き合っている。学会での発表にも積極的に取り組んでおり、海外の新しい技術の動向にも精通している。