母の日常　麻酔とは⑤結局どっち（2023年2月14日）

こんにちは、脂肪吸引の母、こと、モッズクリニックの山田　有季です。

本日は母の日常を。

①～④にわたり、麻酔の話をしてきました。

今回は、結局どっちがいいの？というお話。

これもかなりマニアックかもしれません。

SNSで話題になった、麻酔問題。

全身麻酔派と静脈麻酔派。

結局のところ、この対決に答えはありません。（と私は思っている。）

絶対全身麻酔派は答えがあると思っておられるかもしれませんが。

麻酔＝手術が安全に快適に行える状況を作る、というのが本質ですので、

全身麻酔でも、静脈麻酔でも、笑気麻酔でも、局所麻酔でも、安全に行えればいいんです。

手術を行う側からすれば、全身麻酔はすごく楽です。

患者さんは動くことはないし、呼吸は人工呼吸なので止まることはない。

血圧や脈拍、酸素飽和度、呼気二酸化炭素濃度など、あらゆるモニターがついているので

異常があればすぐにわかる。

じゃあ全部全身麻酔でやればよくない？と思われるかもしれません。

確かにそういう意見も間違いではありません。

ただ、全身麻酔にもリスクがあることを承知の上で、と思います。

全身麻酔は筋弛緩薬を使用しますので、自分の呼吸は止まります。

そのため、気道確保が必要になりますが、もちろん難しい方もおられます。

総合病院の手術室であれば各種気道確保器具がそろっていますので、

最悪気管切開をする、体外循環をまわす（これは心臓外科が必要かもしれませんが）など、

命は救える状況です。もちろん処置が遅れれば脳死などの可能性もあるわけですが。

そのために麻酔科医は全身麻酔を受けられる前に術前診察を行います。

麻酔を受けられる方の全身状態、気道確保、静脈ライン、硬膜外麻酔などが必要であれば脊椎の状態、などなど、

麻酔科医が見ているポイントは多岐にわたります。

美容クリニックで全身麻酔を受ける場合、麻酔科医が常駐しているクリニックはほぼないので、

手術当日に初めまして、が多いです。

もちろん血液検査などの情報は目を通していますが。

初めてお顔をみて、お、これは挿管難しそう、と思うこともあるわけです。

ここは麻酔科医としての積み重ねだと思ってます。

赤ちゃんの頃に実は手術などを受けていて、麻酔をかけてみて、これは！と思うこともあります。

ご本人が手術をしたことを認識していない場合もあるからです。

気道確保ができなければ、命にかかわりますので、

最悪筋弛緩薬を緊急にリバース（拮抗薬を投与する）して、自分の呼吸を戻す、ことも考えないといけなくなります。

あとは血圧変動などなど…

美容外科の手術を受けられる方は基本的に元気な若い方が多いので、

あまり問題にならないかもしれませんが。

何が言いたいかというと…

全身麻酔はそれなりに侵襲があるということ。

一歩間違えれば命に関わるということ。

それをどれぐらいの美容手術を受ける患者さんが理解しているのでしょうか。

いや、美容外科医が理解しているのか。

そんなに簡単に全身麻酔と言わないでほしい。

と私は思います。

もし全身麻酔を受けられることがある場合には、必ず麻酔科医による術前診察を受けてください。

リスクの説明が必ずあるはずです。

決して怖がらせているわけではありません。

ただ、それぐらい麻酔科医はその方の命を背負っています。

手術を受けられる方が安全に、快適にできるように、努力しています。

長くなりました…今回はこの辺で。

このYoutubeにうつっている先生は、私の大先輩です♪