母の日常　麻酔とは③動かない！（2023年2月6日）

こんにちは、脂肪吸引の母、こと、モッズクリニックの山田　有季です。

本日は母の日常を。

次回に引き続き、麻酔について詳しい話をしたいと思います。

前々回は鎮静＝眠っている状態、前回は鎮痛＝痛くない状態　のお話をさせて頂きました。

今回は不動＝動かない状態についてです。

前回、寝ていても痛みがあれば目が覚める、とお話しました。

これに対して、痛みがない状態であれば、目が覚めることはありません。

つまり、鎮静と鎮痛がバランスよく取れていれば、目が覚めることはないし、動くこともありません。

ただ、体が全く動かない状態になっていれば、痛みがあっても動くことはないんです。

これが不動＝動かない状態です。

全身麻酔のときは、基本的に人工呼吸になります。

自分で呼吸をしているわけではなく、器械によって呼吸をしている状態です。

このときには、自分の呼吸があると器械によって呼吸させられるととてもしんどいんです。

そのために筋弛緩薬というお薬を使って、自分の呼吸を止めてしまいます。

自分の呼吸を止めるというと怖い！と思われるかもしれませんが、

この筋弛緩薬は放っておけば切れていきます。また、この筋弛緩薬に対しての拮抗薬もあるので、

いざというときには拮抗薬で筋弛緩薬の効果を打ち消すこともできます。

じゃあ筋弛緩薬さえ聞いていれば、痛くても、目が覚めていても、動かないんじゃないの？

と思いますよね。

その通りなんです。

でもよく考えてください、目が覚めているのに、呼吸できない。（もちろん人工呼吸しているので呼吸しているわけですが、自分から息を吸おうとしてもできない。）

痛いのに痛いと言えない、体が動かせない。

怖くないですか…？

めちゃくちゃ怖いですよね。

なので、やはり意識はない状態にして、痛みも取っていなければならないんです。

バランスが大事。

鎮静と鎮痛と不動、これがバランスよくとれて、全身麻酔は成り立ちます。

ただ、鎮静と鎮痛がしっかりしていれば筋弛緩は常に効いていないといけないわけではありません。

手術によっては、常に効いていた方がいい手術もあるので、

そこは麻酔科医がコントロールしています。

当院で行っている静脈麻酔は、筋弛緩薬は使用しません。

筋弛緩薬を使用すれば、呼吸は止まりますから、必ず全身麻酔です。

先ほど書いたように、鎮静と鎮痛がバランスよくとれていれば、

眠っている、痛くない、動かない、の状態は作ることができます。

全身麻酔ばかりしている麻酔科医にとっては、静脈麻酔の方が難しいと思います。

本当に絶妙なバランスでいい状態を作っているので。

というわけで、麻酔の重要な要素、

鎮静、鎮痛、不動についてお話しました。

ちょっと難しいかもしれませんが、色々考えながら麻酔をしていることがわかってくだされば

本望です。

麻酔の話、まだ続きます。

腹腔鏡手術などでは筋弛緩薬が必須！